進むべき覚悟
事業承継における株式の移転方法として、相続時精算課税制度をご存じでしょうか?
親の株式を子へ移転させる時の贈与税の計算方法です。
手順はいたってシンプルです。
自社の株価を下げる。
下げた時に株式を親から後継者に贈与する。
贈与税を一部負担する。
親が亡くなった時に、贈与した価額で相続財産に加算し、相続税と支払った贈与税を精算する。
業績が右肩上がりの会社であれば、本来、株価の高い時期に親が亡くなった場合、当然、高い株価で相続財産に加算されます。
しかし、上記の制度を利用していれば、贈与した時の価額(低い価額)で相続財産にオンされます。
その差額分だけ、相続税の税負担は軽減されることになります。
ただし、この制度の最大のデメリットは、逆のパターンです。
つまり、業績は上がるものと想定したけど、親が亡くなった時には業績が下がり、株価が下がってしまうことです。
この時、相続財産に加算される金額は贈与した時の価額になるため、亡くなった時の価額より高い価額で相続税が計算されます。
ですので、この制度を選択する場合は、慎重な検討が必要になります。
ただ、もう一度、考えてみたいと思います。
例えば、すでに子に経営権は移譲し、会社の経営はすべて子が行っているケース。
このとき、親から子へ株式の移転が未完了なら、何も手を打たないでいると、今後の後継者のがんばりは、そのまま親の相続財産を形成することとなります。
そうです。後継者が伸ばした業績が、相続税の税負担となるわけです。
少し、理不尽ですよね。
確かに、業績が下がるリスクはあります。
それは、自分自身の能力の結果として、ある意味納得できる範囲ではないかと。
であるならば、相続時精算課税制度を利用して、親の業績をリセットする。
新たに後継者の出発として、将来の業績に対して責任を持つ。
後継者の覚悟を試す意味において、相続時精算課税制度は試金石になるような気がします。