贈与税の納税猶予の適用要件
本日は、贈与税の納税猶予の適用要件についてお話します。
贈与税の納税猶予の要件は、基本的に相続税の納税猶予制度と同じです。
前回お話した相続税の納税猶予制度を復習しつつ、相続税・贈与税の納税猶予の違いを確認したいと思います。
まず、同じ点は、雇用の8割以上を5年間平均で確保することです。
これは相続税の納税猶予と同じで、ある程度柔軟に対応することができます。
また、過去10年間において、雇用の8割を切った時期があるかどうかも一つの判断基準になります。
さらに、前回は書きませんでしたが、雇用の8割要件については、自社で対応できない事態へのセーフティネットが今年の平成29年度改正で充実されました。
納税猶予を受けても、5年間に雇用の8割維持を継続することができるか?
これは、相続税・贈与税の納税猶予を受けるための最大のリスクです。
どんなに自社が頑張っていても、災害や得意先のことまでは不透明です。
そこで、今回の改正で、雇用維持要件は大幅に緩和されました。
つまり、不可抗力である災害や取引先の倒産・事業縮小などの場合に、減少の割合に応じて雇用要件が緩和されました。
例えば、上記の理由で自社の売上げが100%未満に落ち込んだ時点で、雇用維持割合は4割で済みます。さらに、70%未満まで落ち込んだ場合、雇用維持割合は0割になります。
極端な話、全従業員が辞めても、納税猶予の適用を受け続けることが可能ということです。
ただし、この場合、経済産業大臣の信用保証制度におけるセーフティネット保証を受ける必要があります。
重要なことは、不可抗力のリスクを軽減でき、納税猶予制度を受ける上で前向きな検討材料になるということです。
次に、贈与税の納税猶予制度独特の要件を2点だけ確認します。
1点目は、後継者が会社の代表権を有していることです。
自社株を贈与する前に必ず代表者登記を行い、代表者に就任する必要があります。
つまり、平取締役のまま、贈与税の納税猶予を受けることはできないということです。
2点目は、後継者は代表者になる前に、役員として3年間従事する必要があるということです。
一足飛びに、贈与税の納税猶予を受けることはできないことを留意しなければなりません。
相続税の納税猶予も同じですが、贈与税の納税猶予の適用についても同じように、計画的に準備を行う必要があります。
まずは、この手続に関するポイントを抑えておけば、最低限十分だと思います。
(もちろん、この他にもいろいろと要件はありますが、細かな点は専門家に聞くことをおススメします。)
次回は、いよいよ本格的な納税猶予のキモについて話をしていきます。