方程式 相続+遺言=円満

 

「生前に遺言書を作成する必要はありますか?」

 

・・・という問いに対して、こう応えます。

 

「経営者にとって、遺言書は必須です。そして、3年に1回は書いた遺言書を見直してください。」と。

 

よく、遺言書を書いて逆に相続時にもめてしまったという話があります。

 

確かに、仲が良かった家族が、不公平な分割によって不平・不満が出てくる可能性があります。

その意味においては、相続+遺言=円満という方程式は成立しません。

いや、そもそも、その方程式は幻想かもしれません。

 

けれども、企業の経営者にとっては、また別の視点が必要になってくるような気がします。

 

つまり、家族だけでなく社会という視点です。

会社は公器です。

たとえ相続時にもめても、事業は、通常通り、将来にむかって継続していく必要があります。

 

従業員、取引先、地域にとって、なくてはならない存在として存続しなければなりません。

家族のお家騒動で、事業を停滞することは許されません。

 

だからこそ、どんなに円満な家族であっても、相続時のリスクヘッジをする上で遺言書は必要不可欠になります。

 

ここで、遺言書の効果を整理しておきます。

 

一つは、相続時における相続手続きをスピーディーに行うことができることです。

 

相続人間の分割協議を経ることなく、すべての財産の名義変更を行うことができます。

これにより、経営権の集中を迅速に行うことができます。

 

次に、相続権対策です。

 

遺言書の作成により、相続人の相続権を半分に減らすことができます。

 

遺言書を書いたからからといって、すべてが有効になるわけではありません。

相続人には、最低限の生活保障として、遺留分という権利が法的に保証されています。

けれども、遺言書があれば、その最低限の保障の権利は通常、相続権の2分の1まで下げることができます。

 

例えば、相続人が長男と次男の2名の場合、通常、各人の相続権は2分の1です。

この相続権は、遺言書を書くことで、どちらかの相続権をさらに2分の1まで減らすことができます。

 

つまり、仮にもめても、全財産の2分の1を渡す必要はなく、最大4分の1まで抑えることができます。

これも、相続時におけるリスクヘッジになります。

 

遺言書を通して、後継者に未来のビジョンを承継させる。

 

遺言書は家族のためだけでなく、未来の社会のために、ご自身が残した事業を次の世代に引き継ぐバトンであると感じます。

 

読んで頂き、ありがとうございました。