二人の想い、と事業承継
前回からの続きです。
事業承継の株式の移転方法には、贈与税の納税猶予制度と相続税の納税猶予制度があります。
事業承継は、相続時に行うのではなく、生前に完了することがベストです。
なぜなら、経営権に関するお家騒動は、必ず相続後に起こるからです。
ですので、先代は、生きている間に事業承継を完了させる必要があります。
事業承継は経営権の確保です。
経営権は株式の集中が必要です。
その集中の過程には税金の負担が伴います。
しかも、売る予定のない株式の資金化は困難です。
業績の良い会社ほど、その負担が高額になります。
その税金のストレスを解消する手法として、贈与税の納税猶予制度を検討します。
この制度は、自社株の3分の2までの税額を全額猶予する制度です。
贈与税を負担することなく、株の支配権を確保することができます。
ただ、この制度の最大のデメリットは、5年以内に納税猶予の取消を受けた場合、暦年の贈与税の負担が発生することになることです。
つまり、5億円の納税猶予を受けた場合、そのリスクは2億数千万円になるということです。さらに、利子税が加算されます。
やはり、贈与税の納税猶予の選択は躊躇する。
しかし、平成29年度の税制改正により、そのリスクが緩和されました。
5年以内に納税猶予の取消に陥った場合、相続時精算課税制度に変更できるというものです。
これによって、贈与税は9500万円まで緩和され、相続時に精算することができます。
ぜひ、検討する余地はあるのではないでしょうか。
事業承継には、必ず覚悟が必要です。
後継者に任す覚悟。
今後の事業から一線を引く覚悟。
株式を移転する際の税負担の覚悟。
その覚悟を図る上で、贈与税の納税猶予制度を利用する。
後回しになりがちな事業承継を、少しでも考えるキッカケになればと思います。