世にも奇妙な税務上のトリプル課税
むかしむかし、ある会社に、仲の良い二人の兄弟経営者がいました。
兄弟二人は、ともに協力して、立派な会社を作り上げました。
しかし、業績が良くなると、二人の経営に対する考え方にズレが生じてきました。
とうとう、弟は会社をやめる決断をしました。
そして、弟は自らもっている株式を時価で買い取るように兄に請求してきました。
請求時価は10億円です。
兄には資金がないので、会社で買い取ることにしました。
しかし、会社も、一度に10億円の資金を準備することはできません。
そこで、弟と協議することになりました。
そして、協議の結果、何とか3億円で話がまとまりました。
めでたし、めでたし。。。
と、いうわけにはいきません。
これでは、双方にとって大変な事態を引き起こします。それが「トリプル課税」です。
トリプル課税とは「みなし譲渡」、「みなし配当」、「みなし贈与」です。
税務上の”み・な・す”は悪魔の言葉です。
例えば、赤い色のボールペンが「青色のボールペンとみなす」と定義されれば、
実際は赤色でも青色と認識しなければならなくなります。
「おまえが犯人だ」といえば、立証することで無罪を主張することができます。
しかし、「おまえを犯人とみ・な・す」といえば、強制的に犯人になります。
”みなす”は強制力の強い法律行為になるわけです。
具体的にはどうような税金が発生するのか?
兄は7億円対しての贈与税が発生します。
弟は10億円に対しての譲渡所得税が発生します。
え?、え?、え? 頭の中は疑問だらけ。
なぜ、お金をもらっていないのに、兄に税金が発生するの?
なぜ、3億円しかもらっていない弟が3億円以上の税金負担がでてくるの?
これぞ、山よりおおきいイノシシの出現です。
一つの取引によって、時価という世界から「モンスター・タックス」が出現します。