それぞれの非上場株式の売買時価のお話
解答編です。
社長が従業員から買い取る価額は30万円です。
そして、従業員が社長へ売る価額は5万円です。
え!時価がそれぞれの立場によって違うの???
そうです。税務における時価は、立場によって異なります。
変幻自在に時価が変わります。
だから、とても難しいのです。
税務上の時価はつかみどころがありません。
以前、日経新聞で、非上場株式の「時価」について特集が組まれました。
その中で、適正な時価の価格について混乱が生じ株式の集約が進まない、とありました。
この混乱とは、まさに、時価が立場によって異なるからどの時価を使えばよいか分からない、ということなのです。
時価が使われる場合が増えたのに、時価がつかめないのです。
なぜ、異なるのか!?
それは、税務上の時価は、「支配権」に着目しているからです。
社長側にとってみれば、株式を集約することで会社の経営を自由に決定することができます。
一方、従業員は会社の経営に積極的に参加することはありません。
つまり、税務は会社を自由に「支配」できる自由度によって、「支配権」に財産価値をもたらします。
「支配権」=プレミアムです。
株式プレミアムの価値は、社長が持てば持つほど高くなります。
社長が持てば、経営の自由度が上がります。
では、実際、この異なる30万円と5万円の時価をどのように売買するのか?
仮に従業員が5万円でいいよ!といって、5万円で売買した場合、
社長は30万円と5万円の差額25万円に対して、贈与税を負担しなければなりません。
なぜなら、社長は25万円分のプレミアム価値を従業員から無償でもらったわけだから。
結局のところ、選択肢は3つです。
1.従業員の立場の時価で買い取り、贈与税を負担する。
2.社長の立場の近い時価の価額(30万円)で買い取る。
3.時価はわからないという前提で、アプローチする。
3つめは、合理的な判断のもと、大間違いにならない金額エリアを見つけるということです。
前回までお話した評価方法を組み合わせながら、時価を絞っていくのです。
ゴルフで例えるなら、グリーンを外さないようにアプローチする。
ボールをカップに入れる必要はありません。グリーンに乗ればOKということです。
もちろん、当事者がその税務上の「適正な時価」で納得するかは別次元の問題ですが。。。